b型肝炎予防にはエンベロープの構造を知ることが重要

肝細胞を宿主として増殖する肝炎ウイルスにはいくつか種類があり、それぞれ構造が異なります。その中でもb型肝炎ウイルスは他の肝炎ウイルスと異なる部分が多く、感染力も肝炎ウイルスの中では非常に強いものとなっています。

また一度感染するとウイルスが体内に留まり続けることがあるため、b型肝炎は事前の予防が重要となります。ウイルスとエンベロープの仕組みを知り、事前の予防に役立てましょう。

ウイルス性肝炎とは

ウイルス性肝炎とは、ウイルスが体内に進入、増殖することで肝臓に炎症が起きた状態を指します。ウイルスが肝臓内で増殖を始めると、免疫機能はウイルスを排除しようと肝臓を攻撃し始めます。その結果肝臓の細胞の一部が壊され、肝臓の機能が低下します。

肝臓の機能が低下すると、全身倦怠感・食欲不振・嘔吐・黄疸・褐色尿といった症状が現れます。特に黄疸は肝臓の機能が低下し、本来胆汁に使われるはずのビリルビンと呼ばれる色素が血液中に多く含まれるようになった状態です。

黄疸が現れると白目の部分や皮膚が黄色くなっていくので、この症状がみられるようになったら、肝機能の悪化を疑わなければなりません。なおウイルス性肝炎を引き起こす原因となるウイルスは、1種類だけではありません。

ウイルスの種類によって感染経路・症状の現れ方・その後の経過も異なりますので、それぞれのウイルスの特徴をつかむ必要があります。

そもそもウイルスとは?

そもそもウイルスとは、細菌よりもさらに小さな生命体を指します。主に核酸・核(コア)から成り立っており、ウイルスの種類によっては核酸を守るために、主にたんぱく質と脂質で出来た外殻(エンベロープ)を持っているものもいます。

ただしどのウイルスも、自分のチカラだけでは増殖することができません。核酸には複製された遺伝情報が含まれています。しかしそれだけでは複製するための材料が足りないため、自分のチカラだけでは増殖することができないのです。

そこでウイルスは増殖するために、生きた細胞(宿主)に感染します。ウイルスは宿主に感染すると、その細胞内に核酸を放出します。核酸は宿主の細胞から複製に必要な遺伝子材料やたんぱく質を利用、複製できたところで細胞外に放出されます。

肝炎ウイルスはつくりによって特徴が異なる

肝炎ウイルスは肝細胞を宿主とします。ただし肝炎ウイルスの種類は1種類だけではありません。肝細胞を宿主とするウイルスはa型・b型・c型・e型の4種類あります。a型肝炎ウイルス・e型肝炎ウイルスは外殻(エンベロープ)を持っていません。

そのため油を溶かす界面活性剤などで消毒することはできません。加熱・酸にも強く、飲料水・食物を主な感染経路とします。エンベロープを持っていないからか、しばらく経過するとウイルスは消滅、持続感染につながることはありません。

一方b型肝炎ウイルス・c型肝炎ウイルスはエンベロープを持っています。エンベロープは主にたんぱく質と脂質でできているため、界面活性剤などでエンベロープの油を溶かせば、殺菌することができます。ただしエンベロープで核酸が守られていることもあり、肝炎ウイルスが体内に留まり続ける可能性もあります。

肝炎ウイルスが体内に留まり続けると慢性肝炎・肝硬変・肝臓がんなどにつながるリスクが高まります。さらにb型肝炎ウイルス・c型肝炎ウイルスは主に血液・体液を介して感染するという特徴もあります。

b型肝炎ウイルスの特徴

肝炎ウイルスの中でも、b型肝炎ウイルスは他と大きく異なる点がいくつかあります。まず挙げられるのが、核酸の種類です。a型・c型・e型の場合、核酸はRNAと呼ばれる種類です。一方b型肝炎ウイルスの場合、核酸としてDNAを保有しています。

RNAの場合、1本鎖のため非常に不安定な形をしています。一方DNAの場合は2本鎖のため形は安定しています。さらにb型肝炎ウイルスの場合、エンベロープを持っているものの、c型肝炎ウイルスに比べると界面活性剤などによる殺菌消毒がしにくいという特徴があります。

なぜならb型肝炎ウイルスのエンベロープには、脂質があまり含まれていないからです。またb型肝炎ウイルスはエンベロープを多く作り出します。

そのため核はしっかりと守られた状態になります。核が守られることで感染力も強くなり、c型肝炎よりも感染の確率が高まります。c型肝炎ウイルスの場合、主に輸血・血液の付着した道具の共有によって感染します。b型肝炎の場合はこれらの行為の他、性行為やかさぶたから感染することもあります。

さらに母子感染のリスクも非常に高いため、注意が必要です。

b型肝炎は遺伝子型によっても分かれる

b型肝炎ウイルスは他の肝炎ウイルスと構造が異なります。さらにb型肝炎ウイルスは核酸内の塩基の並び方によって、8種類に分けられます。同じb型肝炎でも、遺伝子型(ジェノタイプ)によって症状の現れ方が異なります。

例えばジェノタイプAの場合、成人になってから感染した場合でも慢性肝炎に移行する可能性があります。一方従来より日本で多かったジェノタイプB・ジェノタイプCは幼い頃に感染した場合は無症候性キャリアから慢性肝炎に移行する可能性が高いものの、成人してから感染した場合は慢性肝炎に移行する可能性が限りなく低いです。

ただしジェノタイプBに比べてジェノタイプCの方が症状は重くなる傾向にあります。

b型肝炎はワクチンで予防可能

b型肝炎ウイルスは一度感染すると、体内に留まり続ける可能性があります。特に母子感染等で幼いころから感染していた場合、無症候性キャリアから持続感染に移行、慢性肝炎・肝硬変・肝臓がんなどのリスクが高まります。

そこで大切なのが、b型肝炎を事前に予防することです。b型肝炎は一度抗体が作られると、その後感染する可能性は限りなく低くなります。事前にワクチンを投与、b型肝炎ウイルスに対する抗体を作ることで、本物のb型肝炎ウイルスが侵入してきた時にすぐ対処、感染を防ぐことができるのです。

→b型肝炎の症状を抑えるための定期接種と生活上の問題点

b型肝炎はなぜワクチンで予防できるのか

b型肝炎ウイルスは外殻(エンベロープ)・(核)・核酸の3層構造となっています。このエンベロープは主にたんぱく質と脂質からできています。そこでエンベロープと似た構造のたんぱく質を体内に投与します。すると体内の免疫機能はこのたんぱく質に対応した抗体を作り出します。

この時作られた抗体はHBs抗体と呼ばれます。このHBs抗体が事前に作られることで、抗原となるb型肝炎ウイルスが侵入してきた時に、すぐ対処できるようになるのです。